第19章 オレ様と私
「あ、ありがとうございます」
広げられたカタログを見ると、何ともラグジュアリーな空間に、これまた信長の部屋に置いてあった様な高級ベッドがどーーんと部屋の真ん中に置かれていて、モデルの女の人がワイングラスを片手にそのベッドで雑誌を読みながら寛いでいる。
「えぇっ!」
思わず声が出た。
まさかとは思うけど....
「あの、サイズって......」
「この写真同様にキングサイズと承っております」
やっぱり!!
「や、すみません。私の部屋6畳しかなくて、こんな大きなベッド置けません」
「事前に間取りを見させて頂きましたが、大丈夫です。まぁ稼働範囲は狭くなりますが」
男性は、ニコニコ笑顔を崩さない。
いや、どこが大丈夫なの?部屋の半分がベッドなんて、しかもそれはベッドだけを置いた場合の話で、社長が怒りながら置いて行った空気清浄機もあるし、テレビやテーブルとかも置かないといけないのに、彼とのめくるめくセックスライフの為に、私にダイニングとキッチンスペースで生活しろとでも言いたいのだろうか?
「本当に困るんです。せっかく来て頂いたのにすみませんが、今日はお引き取り頂けませんか?」
「え、ですが....」
ニコニコ顔が少し陰った。
「ちょっと、私も状況が飲み込めてなくて、依頼主と今一度話し合いたいので、どうするか決まり次第またご連絡します。なので今日の所は......」
中々引き下がろうとしない業者の方を何とかエレベーターに乗せて、やっとの事で帰ってもらった。
「はぁ、はぁ、..........やっと帰ってくれた........」
ゼェゼェと、肩を怒らせながら部屋に戻ろうと後ろを向くと、
「い、家康っ?」
エレベーターに乗って出かける所なのか、家康が目の前に立っていた。