第18章 ケイティの部屋②
「...........痕は、善処する」
「やり過ぎって所もよ!十代のガキじゃあるまいし、セナをちゃんと休ませてあげて。目にクマ作ってフラフラで撮影に来てるモデルなんてセナ位なものよ!」
「...........それはできん。まだまだセナが全然足りんのだ」
しれっと、恥ずかしげもなく言う信長ちゃん。
「はぁ〜?あんた、本当に私の知ってる信長ちゃん?」
私の知ってる信長ちゃんは、若くして圧倒的な存在感でこの芸能界の頂点に立ち、その後はこのプロダクションの運営に専念し、まだ23歳ながらに、その経営手腕は冷酷無比で他の追随を許さない。非情な男だ。
彼は、学歴や経歴には囚われず、年齢も関係なく人材を採用し評価する為、様々なジャンルのトップと呼ばれる人材が集まり、この織田プロは活気ある大企業へと成長した。
けれど、彼のやり方を気に食わない者もこの業界には多く、敵が多いのも事実で、そんな環境下で生きている彼は、いつの間にか人としての感情を無くしていった。
秀吉ちゃんや私など、彼が近くに置いている者以外、味方はいないとばかりに、彼は冷めた笑いを浮かべる。
女に対しては特に顕著で、自分の快楽を満たす道具位にしか思っておらず、信長ルールなるものが関係を持った女たちの間でいつしか囁かれる様になった程だ。
そんな彼を、歯止めが効かないと言わせるほどに変えたのは一人の女の子、セナだ。
星の数ほどありそうなSNSの中から彼女を見出したのは信長ちゃんだけど、そんな前より信長ちゃんを知っていて憧れていたと言う彼女は、会うなり彼に恋に落ち、なりふり構わず信長ちゃんに思いを伝え続けた。
そんなセナに密かに惹かれながらも、その思いには答える気はないとのスタンスを取り続けていた信長ちゃんだったけど、ある写真が彼の行動を大きく変えた。
歌舞伎界のプリンス、駿河屋の龍王こと、今川義元とセナのデート写真だ。