第17章 育まれる関係
とりあえず、エレベーターに乗ってドキドキしながらカードキーをかざすと、初めて23と言う数字が光った。
「わ、本当に光った!」
23〜25階は社長の自宅フロアとは聞いてたけど、行くのは初めて。遊びの女は招き入れないと聞いていたから、行く事は叶わないんだと思ってた。
だけど今日、躊躇う事なくこのカードキーを渡してくれ、待ってろと言ってくれた。
夢のような展開に、まだ心はついていけない。
ポーンと、音がして、エレベーターのドアが開く。
見た目は、私たちの寮のフロアと変わらない絨毯の廊下が広がっているけど...
その廊下を歩くと、重厚なドアが一つだけ。
ドキドキしながらキーをかざすと、カチャッと音がして、ノブを押すとドアが開いた。
「お、お邪魔しまーす」
玄関だけで、私の寮を凌ぐほどの広さ。
何故か恐縮してしまって、そろりそろりと中へ入って行くと、
「広っ!天井も高っ!」
社長らしい、白と黒を基調としたインテリアのリビングが広がっていた。
このリビングだけでも、ひと家族が何不自由なく寛いで過ごせそうな広さで、とりあえず高そうなソファに腰をかけたけど、全然落ち着かない。
「遅くなるって言ってたし.....」
時計を見ると、まだ7時。
こんな時間に戻って来れるとは思わず、一旦自分の部屋に戻ることにした。
自分の部屋に戻ってご飯を作りタッパーに詰め、それからシャワーを浴びてお泊まりセットを手に、再度信長の部屋へと戻った。
時計は9時を指してる。
だだっ広い彼の家の中は一人で待つには寂しくて....彼がドアを開けたら直ぐに迎えられるように、玄関に座って彼を待つ事にした。
(こんな広い家に一人で寂しくないのかな)
結局、まだリビングしか見てないから他の部屋は分からないけど、全く人が住んでる気配のない彼のこの家は、私にはとても寂しい空間に思えた。
「早く、帰ってこないかなぁ」
抱きしめて、頭を撫でて欲しいな。
「会いたいなぁ......」
彼とデートした日の事や、お昼の社長室での事を思い出しながら待っていたら、瞼がだんだん重くなって来た。
「........帰ってきたら、起こしてね......」
聞こえるわけがないのに、どこかにいるであろう信長にそう言って、私は眠りに落ちた。