第17章 育まれる関係
映画のクランクアップの翌日から、彼は海外出張へと行ってしまい、今朝の便で帰ってきたとケイティから聞いて、いても立ってもいられず大学が終わった後社長室に会いに行ったら、さっきの展開となってしまった.......
五日ぶりに会う彼と触れ合った箇所が熱い。秀吉さんが来てなかったらそのままお誘いに乗りそうだった。
「危ない危ない。もっと気をしっかり持たないと」
火照る身体を掌で煽ぎながら、夕方にあるCMオーディション会場へと向かった。
・・・・・・・・・・
「じゃあ今夜はゆっくり休むのよ?」
オーディション終了後、ケイティが送ってくれ、しっかりと休むように念を押してきた。
「.....う、うん」
この後、社長の家に行くとは到底言えない雰囲気.....
「ちょっと、何その答え....もしかして社長と会うの?」
探るように見られると、誤魔化す術を知らない私には到底嘘はつけなくて....
「あの....カードキーを預かってて....」
「はぁ?社長宅のカードキー!?」
「.....うん」
「凄いわねアンタ。あの社長を本当に本気にさせたのね」
「っ、」
それは、その言葉通りに喜んでもいいのかな?
「遅くなるけど、待ってていいって言われて...」
彼と離れてまだ数時間しか経っていないのに、もう会いたくて仕方がない。
「........そう、別に仕事に支障をきたさないなら構わないわよ。今はもうあそこにベルもいないし」
「ベルっ........て?」
「あ、ああ、犬よ。去年の夏まで社長が飼ってた犬の名前よ。女じゃないわよ」
「あ、なんだ、ちょっとビックリした。.......でも、何で今はいないの?」
去年の夏って、ちょうど私が信長に初めて会った頃だ。
「元々は社長の妹が可愛がってた犬だから、その妹がハワイの自宅に連れてったらしいわ」
「そうなんだ......」
ご家族はハワイに住んでるなんて、信長の家族の事、当たり前だけど何も知らないな。
「社長に、早く帰るように伝えとくわ。まぁ程々にね、じゃあお疲れ」
パチンっと、ケイティウインクを炸裂させ、ケイティは車と地下パーキングへ消えていった。