第16章 クランクアップ
「セナ、龍」
監督に呼ばれ、カメラの方へ行くと、
スタッフみんなから、お疲れ様と言われ、大きな花束を渡された。
「えっ、これ.......?」
驚いていると、
「初めての演技でヒロイン役で、良く頑張ったな」
監督から、初めてのお褒めの言葉と、みんなの拍手が鳴り響いた。
「お前もなんか言え」
監督に背中を押され、みんなのいる真ん中に立った。
よく見ると、今日は撮りのない役者さん達もみんな来てくれている。
「あの......私、...本当に、全てが初めての経験で、至らない事だらけだったのに、皆さんのおかげで、何とか乗り切れる事が出来ました。」
「途中、サボって信長とデートしてたしなぁ」
監督らしい、愛情のある意地悪がスタジオに響き、わははっと笑いが起こった。
「あ、はい.....、その事でも、私情を挟んで申し訳ありませんでした。迷惑をかけっぱなしで、それなのに最後までこんな.......」
感無量で、もう言葉が紡げない。
こんなに優しい人達と一緒に仕事ができて本当に幸せで.....
「幸せな三週間でした。本当に、ありがとうございました」
深くお辞儀をすると、ワァーーーッと拍手が沸き起こった。
私の後に続いて、義元さんも、短くお疲れ様と挨拶をして、私の初の映画撮影は終了した。
「よし、この後は打ち上げだ、セナお前も来れるな?」
監督にガシッと肩を抱かれると、
「悪いが、セナはここまでだ」
監督の手を払い除け、社長が私の肩を抱いた。
「し、社長!?」
予期せぬ人の登場で、スタジオがざわめいた。
「迎えに来た。帰るぞ」
「えっ?打ち上げは?」
はっきり言って行きたい。
「酒の出る席に貴様を行かせるわけにはいかん。帰るぞ」
「え〜、そんなぁ」
すっごく行きたかったのに。
「おい、信長、酒は出さないから気にするな」
私たちの話を聞いていた監督が助け舟を出してくれた。
「ほんと?じゃあ行きたい」
「だめだ」
「何で?ちょっとだけだから、お願い」
「だめだ、」
「じゃあ勝手に行くもん。信長の意地悪」
「おいっ、セナ!」
理由も言わずにだめだめ言われても納得の行かない私は、信長の制止も聞かず、みんなと会場へと向かった。