第16章 クランクアップ
気が付けば、周りにはスタッフさんの他に演者さん達も集まって来ていて、無断で休んだ事を誰も責めることなく、
「懐かしいわ〜、私もそんな日があったわ〜」
とか、
「逃げたい時位あるよ、まだ若いんだから」
とか、
「スッキリした良い顔になったな」
とか、
「信長にまた泣かされたら俺んとこ来い」
とか.........
優しい言葉ばかりをかけてくれるから、泣かないでおこうと決めていたのに、その温かさに感動して私は泣いてしまった。
そして......
一番謝らなければいけない人の登場...
「義元さん...」
泣き崩れた日から、何度も連絡をしてくれていたのに、一度も返せなかった...
「セナ、おはよう」
何も無かったように、いつもの優しい笑顔で挨拶をしてくれる。
「義元さん、あの私、..たくさん迷惑をかけて....」
ごめんなさい。
と言いたかったのに、義元さんは優しく私の口に手を当てて、私の言葉を止めた。
「セナの、想いが通じたんだね?」
「はい..........」
「そんな顔しないで、俺は、セナが幸せで笑ってるならそれでいいんだよ」
「義元さん.........」
「撮影はあと少しだけど、これからもセナの友達でいさせてくれる?」
そんなの......良いに決まってる。
義元さんの存在に、私がどれだけ救われたか.......
どん底だった時も、義元さんが光を照らしてくれていたから、まだここに立っていられるのに...
「ラテとコーヒーとサンドを持って、またあのベンチに行くよ。その時は、たわいも無い話をしよう」
「.................はい」
綺麗な黄金色の目は、最後まで優しく私を見つめてくれ、その日の撮影は無事終了した。
次の日、私と信長の事が週刊誌に掲載され、信長ロスとなった女性の悲鳴が日本中に響き渡ったけど、信長が速やかにマスコミ各社に交際宣言をする文書を送り、彼の本気度を世間に示した事で、彼の男らしさを称賛する声が上がり、当初危惧した程、マスコミから叩かれたり、追いかけられる事はなかった。