第16章 クランクアップ
車がスタジオの守衛を通り抜けると、ケイティの姿が...
「あ、ケイティ」
私が言うと、信長は車を路肩へ止めてくれた。
怒られる覚悟を決め、車を降りてケイティの元へと行くと、
「セナ、.......お帰りなさい」
ただ笑顔で、両手を広げて迎えてくれた。
「ケイティ、私.......心配かけてごめんなさい」
広げられた腕の中にそっと近づくと、自然と涙が出た。
「謝るのは私の方よ。辛い目に合わせてごめんなさい。あなたに、全てを背負わせすぎたわ」
優しい笑顔で私を抱きしめて、ぽんぽんっと、背中を優しく叩いてくれた。
「おい、いつまでくっついてる、離れろ」
感動の再会に浸る間も無く、ぐっと、信長に襟元を引っ張られて、引き剥がされた。
「あら、社長もいたの?」
「ふんっ、わざとらしい。セナに勝手に触れるな、俺のだ」
「まぁいやだ、何その急に俺のもの的発言!セナ、本当にこんな男で良かったの?わざわざこんな苦労する男を選ばなくても良かったのに」
ケイティが私の頭を撫でながら、覗き込んできた。
「貴様、クビになりたいのか」
信長は、ケイティの手を払って私を抱き寄せる。
「本当に暴君ね。セナ、こんな男やめて私にしなさい」
今度はケイティが私の手を引っ張る。
「貴様、いつから男に戻った?」
また信長が私を引き寄せる。
何なの?この兄弟喧嘩みたいなの。
「もう、二人ともやめて。ケイティも心配してくれてありがとう。でも私、やっぱり信長がいい」
信長の手をそっと握って彼の胸に顔を寄せた。
「ふっ、当たり前だ」
彼はそう言って私の顎を救い上げる。
これは、もしかして.......
「だ、だめ!外でのキスは禁止」
すぐにキスしようとする彼の口を手で押さえた。
チッ、と信長は分かりやすく舌打ちをすると、私の頭をくしゃくしゃとして、押さえた私の掌をペロっと舐めて来た。
「っ..........」
予期せぬ反撃に驚いて顔が赤くなる。
そのまま彼と見つめ合っていると....
「はいはい、勝手に二人の世界に入らないで、そー言う事は家でやって頂戴!」
ケイティに呼び戻され、彼から視線を外した。