第14章 初デート
「おい、そんなものより、こっちの栄養のある方から先に食え」
ゴツゴツとした長い指が、ポテトではなくサンドを食べろと指差す。
「は、はい.....」
仕方なく、一番小ぶりなのを一つ手に取った。
(あぁ、でも美味しそう)
ガブっといきたい所だけど、端の方をカジっと噛んだ。
食べるの大好きなのに、好きな人の前だと大口も開けられないなんて、恋の力はやっぱりすごい。.....と言うか、いつかは気にせず食べられる日が来るんだろうか?恋をすると綺麗になると言うのは、好きな人の前だと恥ずかしくて少食になってしまって、痩せてしまうからなのでは?と変な事を考えてしまった。
.......でも、やっぱり美味しそう。
大口で食べたくなってきて、チラッと彼を見ると.....
(ヒィーー見てるーっ!)
じぃーーーーーーーっと、コーヒーを飲みながらこっちを見てる。
「し、社長もお一つどうですか?」
彼の視線を何とか他に向けたくて、サンドの乗ったお皿を社長の方に移動して勧めてみた。
「....一口でいい」
「えっ...?」
サンドを持つ手を引かれ、私の持つサンドを噛んだ。
(きゃーーーー!!)
「ん、美味い。貴様も早く食べろ」
もう、ドキドキと緊張で味は全く分からない。
それでも、今この瞬間が嘘みたいに幸せで、恥ずかしいながらも頑張って大口を開けてサンドを食べた。
少し心に余裕が出て来て、やっと周りの景色に気が向いた時、
あれ......?
大きな複合施設の入り口に近いこのテラス席は通行人から丸見えで、歩いている人達が、こっちをチラチラ見たり、スマホを私たちに向けていることに気がついた。
よく考えたら、社長は日本一ゴシップ誌を賑わす男(それは言い過ぎ?)で、超有名人。そしてもちろん何の変装もせず堂々と座っている。
平日で人が少ないとは言え、こんなオーラのある人がこんなオープンテラスに座っていてバレない訳がない。
「.....社長、写真、撮られてます。社長ってばれたんじゃ......」
周りに聞こえない様に、こそっと社長に伝えた。
「構わん、撮りたい奴には撮らせておけ」
ピシャリと一言。
さすが信長様。どんな時も堂々としていらっしゃる。