第14章 初デート
「貴様は何か食え」
社長はそう言うと、メニューを広げて私に見せて来た。
「え、でも私お腹すいてない......」
グゥー〜
すごいタイミングでお腹が大きく鳴った。
「わわっ、今のは.....」
慌てて誤魔化そうとするけど...
「くくっ、どうせ昨日から何も食べてないだろう?ちゃんと食え。さっき抱きしめた時、痩せたのが分かった」
彼は笑いを堪えながら、再度私にメニューを見せて来た。
「は、はい....」
うぅーー腹の虫め!こんな時に鳴るなんて....しかも、抱きしめて痩せたのが分かるとか、本当に恥ずかしい....
社長の些細な言葉にドキドキしながら、私はラテとサンドを頼んだ。
「あの、..今日はありがとうございました。迎えに来てくれた事も、デートしてくれた事も、すごく嬉しかったです」
運ばれて来たラテを飲みながら、同じく運ばれて来たコーヒーを飲む社長に改めてお礼を伝えた。
「礼はいらん。貴様を追い詰めた俺にも責任はある」
コーヒーを静かにソーサーに置くと、彼は私の頭を優しく撫でた。
もう、ドキドキとずっと心臓は痛いままだ。
何度も言うけど、この三ヶ月、甘さをほぼもらわなかったから...、どうして彼がこんなにも甘くなったのか....私には全く分からない。
「ふっ、早く食べろ。また豪快な音を鳴らす前にな」
「は、はいっ」
目の前に運ばれて来た美味しそうなサンドは、山切り食パンにサニーレタス、スクランブルエッグやハムなどを豪華に挟んだボリューミーなもので.....
(どうしよう......恥ずかしくて大口が開けられない)
もう、体の関係はあると言うのに、デートをするのが初めてなら、彼と食事をするのも初めてで....
妙に緊張して、大好きなサンドにかぶりつけない。これなら、パスタにした方が小さな口で食べられたのに....
とりあえず、サンドの横に盛ってあるポテトを口に運んだ。