第13章 観覧車
「最後までよく聞け、契約なんてそんなもの、最初から必要なかった」
彼は優しく言うと、私の頬の涙を親指で拭ってくれた。
最後は、優しいと聞いていたけど、本当だ
「セナ............俺は、......貴様を愛してる」
..................?
一瞬、私の中の時が止まった。
.............なんて..........言った..の?
私の耳に聞こえたのは、一生言われるとは思ってなかった言葉で.....
「貴様の笑顔を取り戻したい。セナ、愛してる。」
彼はまた、信じられない言葉を言った。
声にならないほど泣いたのは、初めてだった。
自分に、どんな奇跡が起きたのかは知らない。
けど、彼は間違いなく私を愛してると言ってくれ、今、抱きしめてくれている。
好きだとかそう言う感情は持ち合わせていないと言っていたのに..........
嬉しさと、戸惑いとが交錯する。
だって、何度好きだと伝えても、煩いと言われ続けて来たのに.......
そして、冷たくあしらわれ続けた私は、一つの結論に辿り着いた。
(もしかして........最後は優しく抱いてくれるって、この事なのかもしれない)
そんな考えに私の思考が行き着いた時、
「............セナ、もうすぐ一番上に来る。貴様の言っていたジンクスとやらを教えろ」
またもや、思いもしない言葉が、彼の口から発せられた。
あの時の会話を.......覚えてくれてるの?
そうだ、なぜ彼はそもそもここに私がいると思ったんだろう?
あの日、私は最後まで言葉を紡げなかったし、観覧車とは言ったけど、どこの観覧車とも言っていない。
都内にも観覧車は色々な所にあるのに...都内ではなく、都内から離れたこの観覧車に来てくれるなんて.....
その言葉を............本気にしてもいいの?
「.........キスしたカップルは...幸せになるって......」
彼の言葉を、気持ちを信じたい反面、「阿呆か、本気にしたのか」と言われたらどうしようとも思って、半信半疑のまま、小さな声で伝えた。