第13章 観覧車
「...............ここで、何をしている」
低くて良く通る、大好きな声。
この声から逃げたくてここへ来たのに、反対に何故社長がここにいるのかを聞きたい。
けど、何かを聞くのはもう怖くて.....
私はただ俯くしか出来なかった。
「セナ.........」
「..............っ、ごめんなさい」
仕事を無断で休んだ事を思い出し、その為に来たのだと思い、とにかく謝った。
けれど、彼への感情は抑えられず、膝の上で握り締めた手の甲に、涙がぽたぽたと落ちた。
「謝れと言っているわけではない。なぜ逃げた」
「.........ごめ...........なさい。ごめ..........なさい」
もう、責めないでほしい。
私の言葉はあなたを苛立たせるだけだったから、もう、何も聞かないで........
「貴様、あんなに俺を好きだと言っておいて今更逃げられると思ったのか?」
どうやら彼は、私が何も話さなくても苛立つのか、隣に移動して詰め寄って来た。
「.....っ、ごめんなさい、っく、好きなんて言って、嫌な.......思いをさせて........ごめんなさい。..........好きで、どうしようもなく社長が好きで、.........だから、分かって欲しくて....っく、でももう、言いません。だからもう.........許して下さい。.........くるし....くて、もう.............契約を....解除して下さい.........」
「...............なに?」
少し、困惑したような、でも苛立った彼の声。
私の中の彼の声は、いつも苛立っている。
あなたに勝手に思いを寄せた私を許してほしい。
好きだと言う度に、黙れと言われた。でも、言い続けた私を許してほしい。もう......二度と言わないから。ちゃんと、忘れるから.........ごめんなさい。
「っく、事務所も.........辞めます。もう、普通の学生に、社長に出会う前の自分に、っく、戻りたい......」
「.......な...にを言ってる....」
彼の手が伸びて来て、私を掻き抱いた。