第13章 観覧車
そうしてしばらく経った頃、観覧車が頂上に近づいてきたのが分かった。
「............セナ、もうすぐ一番上に来る。貴様の言っていたジンクスとやらを教えろ」
あの日、途中で言うのを止めた言葉....... 俺の態度が、貴様をいつも苦しめた。
「.........キスしたカップルは...幸せになるって......」
やっと聞き取れるほどの小さな声で、俺の胸に顔を埋めながら恥ずかしそうに言うセナが可愛くて、もう一度言わせたくなった。
「聞こえん、もう一度言え」
「っ............」
セナは顔を真っ赤にさせて俺を見た。
「早くしろ、過ぎても知らんぞ」
「えっ?だから.........観覧車の一番上で...キスしたカップルは、その...幸せになれるって.......」
余程したかったのか、顔を赤らめながら必死で俺に伝えるセナ。
初めて会った時のセナは確かにこんな感じだった。
俺のつまらない感情で、こんな愛らしい仕草をずっと見逃して来た事が、悔やまれた。
「......ふっ、やはり貴様は言うことがいちいち可愛い」
外を見ると頂点を示すポールが迫って来るのが見える。
ジンクスなどどうでもいいし、こんな事をしても別れる奴らはごまんといるに違いない。だけど今は、セナの願いを叶えてやりたい。
セナの顔を引き寄せ、おでこを寄せた。
「愛してる、........セナ、愛してる.......」
今まで伝えて来なかった思いの全てを込めて、唇を重ねた。