第11章 最後の夜
..........あれ?
「どうしたの?」
「あの犬.........」
「あぁ、アフガンハウンドだよ」
「そう、アフガンハウンド。前もそう言って、教えてくれたよね?」
「セナ?」
やっぱりこっちが夢なんじゃ.......
「ダメだよセナ」
「え?」
「あの犬を助けてはダメ」
「どうしたの?急に........」
「このまま一緒に、インハイに行こう」
「うん、分かってるよ。でも...............」
あの犬、助けないとどうなるの?
「セナ、今辛いよね?あの犬を助けなければ、違う未来が待ってるよ」
「違う...........未来?」
..........そうだ、私....この後あの犬を助けて事故に遭うんだ。
骨折して入院して、夢だったインターハイも欠場して.........
「セナ、夢を叶えて楽しい未来に行こうよ」
友達が、私の腕を引っ張ってくる。
「..........そうだよね、インハイは夢だったし、それ以上に大切な事なんて無いよね.......」
そうだよ。あの時.......事故にさえ遭わなければ私は.............
『セナ、契約は続いている。貴様の初めては俺が全てもらうと言う約束を違えるな』
私は............
『貴様は俺のものだ』
違う未来.........
でもその先には........彼はいない........
「ごめん、やっぱり犬を助けに行くね」
「セナっ!」
プァーーーーーーーー
キキキキキキキキキィィーーーーー
「はっ!」
あの日と同じ、車に轢かれる所で目が覚めると、真っ暗な自分の部屋の中。
「はぁ、夢か........撮影から戻ってきて、寝ちゃったんだ.......」
.あんな夢を見るなんて、相当弱ってるって事なんだろうか?
スタジオで泣き崩れた私はあの後、今朝から体調が悪そうだったと義元さんが機転を利かせてくれ、私の撮りは明日へ延期となった。
寮まで送ると義元さんは言ってくれたけど、それを頑なに拒んで何とかここまで戻ってきたのは覚えてる。