第11章 最後の夜
「............セナ、..........セナ」
........懐かしい友達の声。
「ん..........」
でもまだ眠い...........
「セナ、起きて、もうすぐ会場の駅に着くよ!」
「え..........会場.....?」
何の事か不思議に思って目を開くと、去年の夏の映像が目の前に...
「.........あれ?みんなどうしたの?制服なんて着て」
私達もう卒業したのに.......
「............ セナ寝ぼけてる?自分も着てるでしょ?私たちこれからインハイの会場に行く所でしょ?」
インハイの会場?........本当だ、私......制服着てる。
「でも私達.....もうとっくに卒業したんじゃ......」
記憶がぶれてきた。こっちが現実で、今までのが夢?
「.......ちょっと、大丈夫?卒業も何も、これから念願のインハイでしょ?出場せずに卒業しちゃうつもり?」
......そうだよね。
あんなに練習して来てやっと掴んだ夢のステージに、私出場した記憶ないし......
「ご、ごめーん寝ぼけてた。目覚めた、行こっ!」
初めて来た駅を降りて、会場までの道のりを友達みんなで歩いた。
「私、.....さっき何か夢見てたみたいで、しかも織田信長と付き合ってた」
いやに現実味を帯びてたけど、夢だったんだ。
「えー!最高じゃん、だから寝ぼけてたんだ。いつも遊びでいいからお願いしたいってセナ言ってたよね」
「言った言った〜。よく覚えてるね」
「セナの信長好きはもう病気じゃん?見た目可愛いのに、信長語り出すとドン引きするほどでさ、だから18年間彼氏出来ないんだよ」
「うー、いいの。だって本当に走る姿が綺麗なんだよ。あんな男子、他にいないもん」
「分かった分かった。それはもう聞き飽きたっつーの」
いつもの、たわいもない会話。なのに、懐かしい気がする。
心に何かが引っかかりながらも、友達とインハイまでの道のりを歩くと、白くてストレートの長い毛の大型犬が目に入った。