第10章 壊れた関係
「はっ、..........んぅ、........あっ、」
彼の手が、器用にブラを外し廊下へと落とす。
掌で捏ねるように、私の両胸を弄ると、彼の唇は私の首筋へと移動し、ちゅっとキスを落とした。
「あっ、あまり、痕をつけないで」
昼間、義元さんに指摘された事を思い出した。
「.............なぜ、そんなことを言う?」
彼の動きが止まり、鋭い目で私を睨み見た。
「あの、人に見られると困るし......撮影に影響する場所だと困るから......」
「なら心配ない。ここなら誰にも見られん」
「やっ、そこも見られるから、困るんです!」
わざとそこに痕をつけようとした彼にもう一度お願いした。
「.........貴様........ここの痕を誰かに見られたのか?」
怒りの含んだ声で言うと、私の首筋に指を滑らせて、今日義元さんに指摘された場所を触った。
「貴様はやはり油断ならん」
「えっ?」
「誰に見せた?.........」
「やっ、」
彼は私を抱き寄せて、髪を乱暴にかき上げた。
「ちがっ、撮影で偶然見られて、........いたっ!」
同じ場所に、いつもよりも大きな痛みを伴って彼が痕を落とした。
「ひどい......何でこんな事」
「貴様は俺のものだ、口答えは許さん」
「だから........」
どうしてそんな思わせぶりな事を言うの?
俺のものだと言う独占欲と愛情はどう違うの?
それが分からない私は子供なんだろうか。
「セナ、これ以上痛い思いをしたくなければ大人しくしろ」
「っ.............」
冷たい視線を向けられ、言葉に詰まった私を抱き上げると、そのままベッドに連れて行かれた。
「何も考えるな。貴様の気持ちもいらん。ただ黙って俺を感じていろ」
「んっ..............」
好きだと言えば、乱暴に抱くと言われている気がして、怖くて.........その夜は気持ちを伝えることが出来なかった。
ほろ苦いタバコの味のする彼のキスを受け止めながら、この味に慣れる日が来るまで彼とこうしていられるんだろうかと、そればかりを思った。