第1章 :受難シリーズ 理性と感情の狭間で〜リヴァイ編❶〜
髪の毛を乾かした後…リンは執務室の隣にある、リヴァイの部屋のベッドに入った。
執務室には静寂が訪れ、ペンの音と紙をめくる音だけが響く。
ただ先程と違う点があるとすれば…お風呂上がりのリンの髪と身体の、甘くて優しい残り香。
書類が一段落し、リヴァイは椅子に深く座り直した。
先ほどリンに入れて貰ったお茶の残りを口に含み、部屋の残り香を堪能する。
そして髪の毛を乾かした際に触った、サラサラした気持ち良い感触も思い出し…またドクリと心臓が鳴る。
好きだと自覚しても、心がまだ幼いリンに中々手を出す事が出来ず…最近悶々としていたリヴァイ。
そんな状態でのこの状況…
これは俺に課せられた試練なのか?
先程のハンジの表情を思い出し、チッと舌打ちする。
明日の掃除の事を考え、そろそろ就寝しようかと書類を片付けていると…隣の部屋から小さな声が聞こえた。
(何だ?)
「リン?」
部屋に入るといつもの自分の部屋と違う香りを感じ、またフッと口元が緩む。
そして真っ直ぐに少女が眠るベッドの横に立ち、顔を覗き込むと…リンが泣いていた。
『お父さん…』
あの郷で見た壮絶な情景を思い出し、苦痛に顔が歪む。
そして少女の瞳から流れた雫を掬い取り、ペロリと舐めた。
極度の潔癖症な彼を知る者からすれば、信じられない行為だったが…既にその雫さえ愛しいと思う彼からしてみれば、ごく普通の事だった。
リヴァイはベッドの端に座り、少女の髪を優しく撫でた。
「リン…俺が側にいる。」
すると少し少女の顔が和らぐ。
そして髪を撫でていた手と反対側のリヴァイの手に、リンの手が重なった。
『リヴァイ…』