第2章 :思い出を一緒に〜promise〜
僅な地上の隙間から入る、オレンジ色の日が当たる屋上で改めて子供を見ると…白い服は薄汚れ、顔には擦り傷・手足には無数の切り傷と血が滲んだ跡が見え…ファーランは顔を顰める。
「おまえ、大丈夫か?その腕と足の傷…」
『あっ…うん。これは縄を切る時、割れたガラスを使ったから。靴も逃げてる最中に脱げちゃって…でも大丈夫!すぐ治して貰うから。』
(治して貰う?手当てするって事か?だが…)
地下街に流れてる水は汚染されている為、傷口に使用するには適していない。
(一旦家に帰るか?)
青年の家には綺麗好きである家主が所有してる小さな貯水槽があり、そこから綺麗な水を汲む事が出来る。
まずは傷口を洗い流し、その後消毒しなければならない。
生憎と生傷の絶えない同居人もいる為、家には傷薬も常備している。
「傷の手当てをしたいんだが、綺麗な水が此処には無い。家から持って来るから、少しここに隠れて待ってな。」
ファーランが少女の頭をポンと撫で物陰を指すと、素直にコクンと頷く。
青年はその様子に安堵し、また立体起動で飛び去って行った。
(少し遅くなったか?)
水と傷薬だけのつもりが、念のためにと食料も調達して戻ると…既に日は落ちビルの屋上も暗闇と化していた。
待つように言ったが、まだその場所に居るだろうか?
ファーランは恐る恐る近付き、指示した物陰を覗き込む。
少女はまだその場所にいた。
そして必死で逃げ疲れたのだろう…膝に頭を預け、スヤスヤと寝ていた。
ファーランは無防備だと心配しつつも微かに笑い…持って来たブランケットを少女の頭から被せ、身体ごと包んだ。
「手当ては起きてからするか。しかし…身なりや雰囲気から察するに、間違いなく地上の人間だよなぁ。どうするか…」
ファーランは少女を見つめ、ひとりごちた。