【ハイキュー】キッカケはいつも君だった。【影山飛雄】
第2章 僕を見て
2階から降りてきた美羽に気付いた一与は座っていた椅子から立ち上がった。
「空ちゃんと飛雄、大丈夫だった?」
「うん、飛雄は恥ずかしがってた」
何となく察し、苦笑いする一与。
「一与くん、私の選択、間違ってたのかな……」
俯き、一与へと尋ねる美羽の表情は暗く、思い詰めているようだ。
空と飛雄の家庭の事情は少し似ている。
仕事が多忙で家を空けがちの両親を持つ空と飛雄。
空の家は両親含めた3人家族で、近辺に祖父母や親戚もいない為、両親が仕事で家を空ける時は、飛雄の家に厄介になる事が多い。
しかし、空にとって両親の存在は少なからず大きく、両親を欲する時にその存在がいない事は、幼い空にとって堪え難いものであった。
しかしそんな時、親と姉の温もりを注いでくれる一与と美羽、隣で共に育ってきた片割れのように愛しく想い、想い合い、空の全てを包み込んでくれる飛雄の存在は何よりも大切だ。だからこそ、空は繋がりを求め、失う事を恐れる。
まさか自分がバレーを辞める事が、空を苦しめる事に繋がるとは思っていなかった美羽は自分の選択を悔やんだ。
そんな美羽へ一与は近づき、美羽の肩へと手を置いて話し始めた。
「昨日も言ったけど、自分の「大事」を一番わかってるのは自分だよ。自分で出した結論に間違ってるも、間違ってないもない」
「うん……」
「バレーは想いを繋げるスポーツでもある。今は空ちゃんににとって辛い事かもしれないけど、美羽ちゃんの想いはちゃんと伝わるよ。それに、空ちゃんはもう影山家の一員で家族だ。大丈夫、大丈夫だよ」
一与の言葉に美羽は頷き、肩の力を少し緩めた。
そんな美羽の様子に一与は肩に置いていた手を下ろし、目尻を下げ頬を緩めた。