【ハイキュー】キッカケはいつも君だった。【影山飛雄】
第2章 僕を見て
空は美羽を本当の姉のように慕っていた為、繋がりであるバレーを辞めた事により、美羽との繋がりが消えてしまうのではないか、美羽が遠いどこかへ行ってしまうのではないかと、不安や恐怖が心を占めていたのだ。
しかし一方で飛雄も、美羽の話の時に感じた、空の暗く何も映していない瞳を思い出し、再び不安な気持ちに苛まれていた。
夕飯時も風呂の時も色があった空の瞳が、また何も映さなくなってしまったら…この不安を一刻も早く取り除かなければならない。
その時ふと飛雄の頭の中に、以前美羽が観ていたドラマのある光景が浮かび上がった。
内容は覚えてはいないが、泣いている女に、男が女の頬を両手で包み、自身の唇をそっと押し当てると、泣いていた女は驚き涙が止まったのだ。
その時の光景を思い出した飛雄は、頬を染め恥ずかしさでむず痒くなりながらも、まずは空の涙を止める為に、空の背に回していた両手を頬へと移し、そっと自身の唇を押し当てた。
突然の出来事により、空の涙は一瞬にして止まった。
空が泣き止んだ事を確認した飛雄はそっと唇を離し、空を見つめた。
「…………」
「こうすると、涙、止まるって……前、何かのドラマで観た……」
固まり、動かなくなってしまった空に、飛雄は頬を包んでいた両手を離し、自分の行動の理由を説明した。
説明を聞き終えた空は、不器用ながらも自分の為にと行動してくれた飛雄に嬉しくなり、涙を手の甲で拭うと、頬を緩めた。
「ありがとう、飛雄」
空の笑顔に飛雄は頬を染め、頷いた。
「空、皆、ここにいるから。誰もどこにもいかないから。ちゃんと繋がってるから。だから大丈夫」
飛雄は自分にも言い聞かせるように、兎に角今思っている事を空へ言葉で表した。
「うん、うんっ……!」
飛雄の言葉に、空は両目一杯に涙を溜めて、飛雄に抱きついた。
そんな空を飛雄は、空の温もりを確かめるようにぎゅっと抱き締めた。