【ハイキュー】キッカケはいつも君だった。【影山飛雄】
第2章 僕を見て
時計の短針が2を、長針が7を差す頃に、飛雄はふと目を覚ました。
未だ暗闇に包まれる時間帯である事は、少し開いたカーテンから見える景色でわかる。
眠る前に抱き締めたはずの身体は今は背を向けていて、寂しさを感じた飛雄は、心地良い温もりへ手を伸ばした。
しかし、ふと飛雄の耳へ入ってきた音に、飛雄は伸ばしていた手を止めた。
その音は空から微かに聴こえてくるもので、ぼんやりとしたままだった意識が徐々に覚醒していく。
「空……?」
飛雄は身体を起こし、空の肩へそっと触れた。
空はびくりと肩を跳ねさせると、飛雄へと振り返った。
「飛雄……っ」
涙に濡れた瞳で自分を見つめる空に、飛雄は大きく目を見開く。
「空……」
「美羽ちゃんが……っ、美羽ちゃんがっ……、バレー、やめちゃった……っ」
飛雄はすぐさま空を抱き起こすと、そのまま背に回した手に力を込めて抱き締めた。
「ううっ……美羽ちゃんが……っ、どっか、いっちゃう……!」
空は飛雄の背に手を回し、さらにきつく抱きつくと、先程よりも少し大きな声で泣き始めた。
飛雄は、安心させるように空の頭をそっと撫でた。
「どこにもいかないよ。皆ここにいる」