第14章 短期合宿2
週末を利用して再び短期強化合宿が行われた。スケジュールは以前の開催時と大体同じ流れで組まれ、萌は今回も皆のサポートに力を入れていた。
このほうが練習で仁王と顔を合わせずに済むからいい。そんな風に考えるなんて重症だな、と思いつつ仕事に取り組んでいた。
就寝前の自由時間、萌は合宿所の一室で片付けを済ませた後、机に手帳を広げ明日のスケジュールの確認をしていた。
不意にコンコン、とノックの音がして半分開いていたドアを見やると、仁王が肘を曲げて壁に手をつき、首を傾げた姿勢でこちらを覗いていた。萌が一人になる機会を狙っていたかのような彼の登場に、心がびくついてしまう。
「入るき、いいか?」
こちらへ向かって来る彼に対し、萌は反射的に椅子から立ち上がった。そのまま逃げようと試みる。
「ちょい待ち」
しかしあっさりと腕を取られ、捕まってしまった。
「…なんで逃げるんじゃ」
仁王の問い掛けに心の中で答えを探す。
何故だろう…話すのが怖いからかな。これ以上関係が壊れるのが怖い。
「俺を避けてるんか」
寂しげな色を滲ませた問いに心が軋む。
避けたい訳じゃない。でも、上手くいかないんだもの。惨めな姿晒したくない…
「夢野…すまん」
何も言わない萌に観念したように呟くと、仁王は捕らえた腕を自分の胸へと引き寄せ、萌をゆっくりと優しく包み込んだ。
「俺の言葉が相手に届きにくいことは解っちょるんじゃが…」
頬がどんどん赤くなっていくのを感じる。何故抱きしめてくるのか分からず、感情がおかしくなりそうで、冷静になりたくて伝えた。
「離してください」
「嫌じゃよ」
強めに言い切ったが、相手も力強く返してくる。
「お前は俺の大事なダブルスパートナーじゃ。離したりはせん」
ダブルスパートナー…それだけ?
この期に及んでそんな風に思う図々しい自分がイヤになる。