第13章 紳士の謝罪
低い声が放たれ、緊張した空気が漂う。いつもの彼の飄々とした物言いは影を潜め、怖いくらい静かな怒りを感じた。
「…誤解を解くのは骨が折れそうですが」
柳生が話す間、仁王はギラリとした目でこちらを睨み据えている。
「一応断っておくと、違いますよ。疑惑の目を向けないでください」
柳生が普段通りに話しても、仁王のほうは全く取り合う雰囲気ではない。
「その状態で言われてもな、説得力ゼロぜよ」
「困りましたね……本当に違うんです」
柳生は冷静に、相手を刺激しないよう落ち着いて語り掛ける方法に切り替える。
「夢野さんを励ましたかった…ですがやり方を間違えましたね。謝ります…申し訳ない」
正直に胸の内を明かす柳生。だが仁王は引くに引けなくなっているようだ。苛々しているようにも見える。
こんな些細な誤解で、二人の仲まで険悪になってしまったら……もうイヤだ。
「夢野!」
いたたまれなくなってその場から走り去った。
また、逃げてしまった…あなたの目の前から。
胸が痛い、息が苦しい。少しのすれ違いが溝を深めていく気がした。
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