第11章 県大会
「夢野」
彼は何だか少し改まった様子で切り出した。
「さっきの話の続きだが…明日、あいてるかのう?」
さっきの話というと…ご褒美のこと?
唐突に話をぶり返され不思議に思いつつ頷いた萌は、彼の次の言葉に耳を疑った。
「デート、してくれんか」
「で、デート!?」
驚いて大きな声を出してしまうと、彼にシーッと人差し指を唇に当てられた。触れた指にドキドキしつつ押し黙る。
しかし仁王にしてはかなり直球な誘い方だ。
あんなに口ごもってなかなか言ってくれなかったのに、何だかヘンだな…
「どうじゃ?」
「えと…はい。分かりました」
「じゃあ明日十時に駅前でな」
それだけ残して足早に立ち去っていく。
思ってもみなかった展開に驚き、よく状況が呑み込めないまま承諾してしまった。けれどそのうち、試合の疲れも無力感も吹き飛ぶくらい、嬉しさがこみ上げてきた。
明日は、仁王先輩と二人だけで会えるのかな…?
高鳴る胸を抑えながら駆け足で帰宅した。
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