第10章 短期合宿
穏やかに紡がれる言葉に驚く。こんなに素直にお礼を告げられるなど思ってもみなかった。
感動すら覚え応えようと上を向いた瞬間、こちらを見ていた仁王が背を屈めてきた。彼の顔が近付き首を傾けたと思うと、頬に唇の感触が残る。
…え……今のなに…?
「今夜はぐっすり眠れそうじゃ」
何が起こったか解らずぼうっとしていると、すぐに腕が解かれ体が離れた。照れ隠しなのか、仁王はそのままさっさと立ち去ってしまう。
彼の腕の温もりがまだ残っている。心臓は破裂しそうに高鳴っていたが、彼なりの感謝の表現だったと自分に言い聞かせて部屋に戻った。
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