第1章 ミクスド始動
彼のペースにのまれながらも、空いているコートへ入り二人でラリーを行う。
「緊張しとるみたいやの」
指摘の通り、この場にまだ慣れていないせいで体が固いままだ。緊張が解けずその後のグループ練習でも苦戦していた萌を見て、仁王が励ましの言葉を掛けてくる。
「まあ、最初だし仕方ないのう。そのうち慣れるじゃろ」
言葉自体は優しい。だが本当にそう思っているのかよく分からない。そう感じさせる掴みどころの無さと独特の雰囲気が彼にはあった。
不思議な人だな…本当にペアとしてやっていけるか不安だ…
「これから鬼のようにしごいちゃるき、楽しみにしときんしゃい」
「えっ…!」
思うように動けなかった後でそう宣言されると、ついていく自信が持てずびくついてしまった。すると彼は少し驚いたような顔をして訂正する。
「冗談じゃ。そう怯えなさんな」
そしてひと息つき萌の顔を見ると、ニッと笑いかけてきた。
「素直なヤツじゃのう」
…あ、笑った。
明るい表情ではないが、笑みを見せてくれたことに萌は少し安心する。
その後は練習の計画を練り終了となった。
隙の無さ、そしてとっつきにくさが印象に残る仁王のことが心配ではあるが、いつまでも戸惑ってはいられない。
早く部に慣れるように、精一杯頑張ろう…!
.