第10章 短期合宿
立海男子テニス部の短期集中強化合宿が始まった。土日の二日間を有効に使い、校内の合宿場に寝泊まりして練習を行う。
参加者は大会に出場するレギュラーメンバーだ。ミクスドの試合が残っているため萌も参加していた。
普段より時間をかけられる分練習量も増えハードな内容となっている。そのため、萌は基本的には彼らのサポートにまわるよう真田から頼まれていた。
早速練習が開始されたが、萌は皆より早く抜けて昼食の準備に取り掛かる。人数が多いため大変だ。必然的に調理場にいる時間が長くなる。
その間にもちょくちょく丸井が現れては、食べ物を物色していく。
赤也が来た際には、運悪く真田に見つかって罰を言い渡されていた。真田には赤也専用センサーでも付いているのだろうか。
昼食を終えると、午後の練習の準備をしつつ今度は夕食の支度に追われる。目まぐるしい状況だが、立海の皆のためだ。
夕飯の仕込みをしておこうと冷蔵庫から野菜を取り出す。そこへ調理場の扉が開き、仁王がひょっこりと顔を覗かせた。
「頑張っちょるな」
「仁王先輩!」
顔を見られて嬉しくなり、つい声が弾んでしまう。
「大丈夫か?何か手が足りん事はないかの」
「大丈夫です。お夕飯は焼肉なので、少し楽です」
「野菜さえ切っておけば何とかなる、か」
まな板の横に並んだ野菜を見て仁王は納得したようだ。
「じゃあひと息ついたらどうじゃ?ほら、差し入れ」
彼はそう促して缶ジュースを二本掲げてみせる。ちょっとした気遣いがとてもありがたい。
「先輩もひと息ですか?」
「…ま、お前さんの顔見るついでにのう」
ん?ついでが休憩なの?顔見に来てくれたってことでいいの…?
勝手にそう解釈して小さく喜んでいると、背後から大きな声が響いてびくっと驚く。
「仁王!」
「見つかったか…」
なんと見回りをしていた真田にちょうど見つかってしまった。
「お前達、何をしている?お前は腹痛で休んでいたんじゃなかったか?」
真田は仁王に鋭い視線を向けそう責め立てた。
そうだったの?そんなこと言ってなかったけど…