第7章 地区予選
「…あー…何か変な表現だったかのう。すまん、忘れてくれ」
同じく歩みを止めた仁王は、口が滑ったという風に口元を軽く手で押さえている。
か…可愛いって言った?
「置いていかれますよ、仁王くん、夢野さん」
遅れをとった列の最後尾の萌達を振り返り、柳生が声を投げ掛けてくる。
「おう。今行くぜよ」
返事をして彼らのあとを追う仁王の背中を萌も追いかけた。
先程からどきどきと鼓動が鳴り止まない。嬉しくて、少し恥ずかしくて、くすぐったくて。
自分の中で彼の存在がどんどん大きくなっていくのを感じていた。
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