第7章 地区予選
大会後、レギュラーの皆で幸村部長が入院している病院へと赴いた。全国大会までの長い道のりの第一歩、地区予選のスタートを切り順調に勝ち上がった報告をする。
その帰りに、店が立ち並ぶ通りの一角でジェラートワゴンを見つけた丸井が寄り道をし始めた。買い食いしたい一心で、真田を上手いこと説得して反論を何とか抑え込んだようだ。色とりどりのジェラートが見た目にも可愛くて美味しそうである。
「夢野」
丸井達の買い食いを立ち止まって待っているなか、仁王が呼び掛けてきた。
「約束通り奢っちゃるよ。何味にする?」
そう言えばそんな話をされたっけ。
律儀に約束を果たそうとする彼に驚きつつも答えた。
「えと…ブルーベリーヨーグルト」
「了解ナリ」
仁王はスッとワゴンに向かっていき、萌の分を頼んでくれる。
「ありがとうございます…」
女子のためにスイーツを買って来てくれるなんてこと、するんだ…
一連の行動全てが意外でイメージに合わない。こういった事は面倒臭がるか、恥ずかしがると思っていた。
「美味いか?」
せっかく奢ってくれた相手に意外だなんて失礼だ。慌ててこくこくと頷く。
「次の大会も勝ったら、また何かご褒美があるかもしれんよ?」
「絶対勝ちます!」
冗談を飛ばしてくる仁王に間髪入れず即答すると、プッと笑われてしまった。そのままゆっくりと歩き出す彼について行く。
「しかしお前さん、なかなかに負けん気が強いの」
今日の試合を思い返しているのか、視線を遠い夕焼けへ送りながら彼はしみじみと呟いた。
「食らい付いていく姿勢が良い。と言うか、可愛い」
そこで突然、話の流れにそぐわない単語が飛び出してきて萌は自分の耳を疑った。予想外過ぎて言葉を失い、気付けば足が止まっていた。