第6章 データ収集
しかし、軽くはぐらかされて無難な回答しか返ってこない。それどころか逆にこっちが聞き返されてしまう。
「そういうお前さんはどうなんじゃ」
「あたしもテニスです。練習、楽しいです」
決して話を合わせた訳ではなく、正直な答えだった。ミクスドに挑戦して色んな事を吸収している最中だしやりがいがある。
「じゃあ、好きな色は?」
急に仁王は関連性のない質問に切り替えてきた。
「緑」
「好きな科目は?」
「んー…国語っ」
「好きな食べ物は?」
「杏仁豆腐っ」
次から次へと矢継ぎ早に質問されてテンポ良く答えてしまった。すると彼はニヤリと悪戯気な笑みを浮かべる。
「素直に答えるのう。このままだとスリーサイズも聞けそうな勢いじゃ」
それを聞いて言葉を失い頬を赤らめる萌に声を上げて楽しそうに笑っている。
からかわれてる……もう、会話してるといつの間にか術中にはまってるんだよね…これも詐欺師の罠なの。
けれど、塞ぎ込んでいた気持ちがいつしか軽くなっているのに気付く。仁王が意図して明るく会話したのかは分からないが、萌は心の中で彼に感謝した。
こうして元気になれる罠なら、引っ掛かってもいいのかもね…
.