第5章 フルーツパフェ
意志を固く決めてきた萌は簡単には諦めきれない。こうなったら、と誘い方の切り口を変えて挑んでみる。
「先輩はパフェについて…詳しいですか?」
「何じゃと」
「リサーチと思えば良いんです」
思わぬ角度から攻められ、仁王の瞳には動揺の色がうかがえる。
「色んな人の好みを把握して経験しておくのも、相手の技術を盗んだりなり代わるのに必要じゃないですか?」
懸命に言葉を探して食い下がる萌の必死な様子に、とうとうプッと吹き出して仁王は笑い始めた。
「ブン太になる予定はないが…分かった分かった、降参じゃ」
結局四人で向かうことになり、電車を乗り継いでお目当ての店に到着した。そのガーリーな店構えを見てジャッカルがため息をつく。
「めちゃくちゃ可愛い店だな…正直入りづらい」
「夢野がいて良かったのう」
仁王が萌のほうを見てニッと笑い、ドアを開けて通してくれる。どきどきしながら可愛らしい内装の店内へ入った。
席に着くと早速丸井がこの店一押しの例のアレを注文する。
「んじゃ、オレは季節のアイス&フルーツパフェのグレートスペシャル盛りね」
あとの二人はコーヒーだけのオーダーで、完全に保護者のポジションだ。
丸井の頼んだ名物パフェの大きさに驚いたり、学校やテニスの話をして楽しく過ごす。
パフェは通常サイズでも結構なボリュームだ。萌もパフェを頼んだのだが食べきれなくなってしまった。
練習でお腹すいてるから食べられると思ったのにな…
「も、もうだめ…ギブ」
「え、食わないの?んじゃ、オレがもらっていいか?」
「おいブン太、まじか。まだ食う気かよ」
身を乗り出す丸井に驚き焦るジャッカル。それはそうだ、丸井はグレートスペシャルを既に完食している。
「…仕方ないのう」
するとそこで小さく呟きながら、仁王がスッと横から腕を伸ばして萌のパフェのグラスを引き寄せた。頑なに拒んでいた甘い物なのに残りを食べてくれる。
「仁王、甘いの苦手なんだろい?無理しなくてもオレが食うって」
「なかなかいけるのう」