第5章 フルーツパフェ
「たるんどる!」
今日も真田の怒声がテニスコートに響き渡る。その声を聞くと気が引き締まり、練習にも熱が入った。
今週の集大成とでもいったような内容の濃い練習をこなし、練習試合までも詰め込んだ金曜日がやっと終わる。
今日は特に頑張っちゃったな…
厳しい練習に疲れ果てのろのろと帰り支度をしていると、丸井達の楽しげな会話が聞こえてきた。
「なあ赤也、お前この後ヒマだろ?行かねえか?」
「えー甘いモンでしょ?オレ焼肉が食いたいっす」
よく聞いてみるとどうやらスイーツの話題らしい。最近オープンしたばかりの店のパフェについてだ。アイスクリーム屋だがカフェスペースが併設されていて、オリジナルアイスを使用したパフェが人気だ。特に、スペシャル盛りという特盛りパフェがあることが噂になっていた。
甘い物か…いいなぁ。今日疲れたし食べたいな。
聞き耳をたてていたのに気付かれ、丸井が嬉しそうに話し掛けてきた。
「お、夢野…だっけか?興味アリってカオしてんな」
何故彼がそんなに女子の好きそうな店に詳しいのか謎だが、話にのってみる。
「フルーツパフェが人気ですよね。アイスも種類が多くて」
「この店知ってんの?じゃお前、行く?」
「は…はい、行ってみたいです」
丸井がとても気さくに接してくれるので、思ったよりすんなりと話がまとまった。
「よし!同志が増えたぜ、良かったなジャッカル!」
「え、俺かよ…喜んでんのはお前だろ」
周りの部員を誘っているようだが、メンバーはまだ丸井、ジャッカルと萌だけのようだ。
丸井先輩達とだけじゃ会話が不安だな…
そう思った萌は、覚悟を決めて仁王を誘ってみることにした。丁度着替えを終え部室から出て来た彼と鉢合わせる。
「仁王先輩っ」
「…何じゃ、どうした?」
気合いの入った呼び掛けに驚いたのか、やや引き気味で返事された。
「パフェ…食べに行きませんか?」
勇気を出して誘うも、彼に重いため息をつかれてしまう。
「俺がそういったモンを好きそうに見えるかのう」
見えません。でも、一緒に行きたいの!