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魔人さんと家飲みしたい

第1章 こんにちは五木荘


部屋に戻り、日が沈むまで片付けをしているとふと隣の部屋から物音がしていることに気がついた。会話をしているような声もぼんやりと聞こえてくる。きっとこっちの音もそれなりにもれているのかもしれない。

(早めに挨拶済ませちゃおう)

インスタントの甘い飲料とクッキーの簡単な手土産を持ち、隣の部屋のチャイムを鳴らした。

「はい…?」
先ほどまで賑やかに感じた室内はシンと静まり、替わりに控えめな男の子の返事が弱々しく返ってきた。
「あ、あの、隣に越してきた鈴木です。突然すみません。ご挨拶をと思いまして…」
「あ、はい今出ます!」
インターホンがなく、扉越しに肉声のやりとりをするのはなかなか緊張するものだ。
名乗った事で警戒心が解かれたのか、声の調子がクルッとかわり元気な青年の様子が伺えた。
「…はじめまして。わざわざすみません。僕は小日向といいます。」
「いえ、突然お伺いしてすみません。今日から隣に来た鈴木です。あの、大きい荷物とかはもう動かさないと思うんですけど、まだしばらくバタバタするかもしれないのでご迷惑になるかもしれません…あの、少ないですが皆さんでどうぞ。」
「あ、ありがとうございます。迷惑なんてそんな、むしろ自分の方が非常識なところが多いかもしれないですよ…。鈴木さんは大学生さんですか?」
青年は少し幼さの残る顔立ちで困ったように頬を掻いた。

高校生の時自分はどうだっただろう。明らかに年上の、だが若者を社会人か学生かなど判断できただろうか。
なんだかくすぐったい感覚になり少し焦ってしまう。
「いや、社会人です。仕事柄、帰宅時間はまちまちになってしまうんですけど。」
「あっそうなんですか?!すいませんっ」
「いえ、むしろ最近老けたかなって思ってたんで、ありがたいです。」
自分の弁解も恥ずかしいものだ。青年の言葉にお世辞のような意図はないはずなのに。
では…と一度の会釈と苦笑いを残してその場を離れた。
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