第5章 慣れてきた時こそ
「どっかに落としたと思ったらてめぇが持ってたのかよ…」
俺はカレーを食べる手を止め生徒手帳を受け取る。
『本当は昨日渡そうと思ったんだけど爆豪さん先に帰っちゃったから…渡すの遅くなってごめんね』
「別に…」
『じゃあ、私はこれで…』
何か見返りを求められたりするのかと思ったがそんな事もなくあっさりとその場から離れていく言。爆豪はそんな彼女の姿を見て少し拍子抜けしながらもまた昼食の続きに戻ろうとしスプーンを手にした瞬間、けたたましいサイレンが鳴り響いた。サイレン後のアナウンスと上級生の言葉で学校内に侵入者が現れた事を悟った生徒達はパニックに陥る訳だが爆豪は慌てて席を立ち出入口に駆け込む事などせず一旦様子を見ていた。
───バカが。そんな一斉に駆け出したら出入口がパンクするに決まってらァ。後先考えねぇで行動しやがってだからモブのままなんだ、よ…
そう心の中で逃げ惑う生徒達を馬鹿にしていると爆豪の視界には今にも人混みに流され転倒しそうになっている言が映った。爆豪は何を思ったのか、いつの間にか言を雪崩込んでくる人混みから守っていた。