第20章 2人の英雄
何者も拒まない高く高く澄んだ水色。時折流れる白い綿菓子と下を見下ろせばどこまでも続くコバルトブルーのカーペット。そんな宝石のような景色を一望できるプライベートジェット機の中で言は落ち着きなく何度も手元に持っていたパンフレットを眺めては閉じ、眺めては閉じと同じ行動を繰り返し、今か今かと目的地への到着を待ち望んでいるようだった。
「言さん大丈夫?もしかして具合とか悪かったり…」
落ち着きのない言を見て心配したのか通路を挟んで隣の座席に座っていた緑谷が声を掛けてきた。
『う、ううん。大丈夫!もうすぐ到着だと思ったらソワソワしちゃって』
「そっか!それならいいんだけれど」
しかし緑谷は空港から飛び立ってすぐ同じ行動を取っていた言を思い出し少しの疑問を抱いたが、本人も大丈夫と言っていたのでそれ以上を詮索したりはしなかった。
「あ!I・アイランドが見えてきた!!」
窓際から映る円形の島。このI・アイランドはどこの国にも属さず、移動機能も備わっている言わば人工島である。そしてこの島には基本的に個性研究の科学者が在住しており、日々人々の為に個性の研究をしたりヒーローアイテムの開発を行っている。そして何故この島が移動するか、それは研究成果や科学者達をヴィランから守る為である。この島はかの有名な監獄タルタロスと同じ警備システムを備え、今までにヴィランによる犯罪は一度も起きていない。そんな無駄な要素は一部もない隅から隅まで考え抜かれて作られたこの島は科学者による科学者の為の島なのである。
『楽しみだね…あ、そろそろオールマイト先生起こしてあげないと』
「うん!オールマイト!オールマイト!」
楽しげにI・アイランドを見つめていた緑谷の隣でうたた寝をしていたオールマイト。緑谷はそんな彼の名前を数回呼び、眠りから引き上げようとする。I・アイランドに到着するまであと僅か─────