第18章 期末演習試験
トリクロロエタンをかけた壁は毒々しい音をたてながらみるみると溶けていく。
『[風]』
そしてトリクロロエタンをアスファルトに掛けたことで発生した毒素を切島と砂糖に吸わせないように個性を使って分散させる。
「壁が溶けた…!!?だが甘い、直ぐに壁を作れば問題はないっ……!?」
壁が解けたことに焦りを見せながらも再度個性を使って壁を出現させようとするセメントス。しかしセメントスの手は凍りついていて個性が使えない状態になっていた。
『そのくらいは想定内です。だから先程トリクロロエタンを出した際に先生の手を凍らせました!鋭児郎、砂糖くんと一緒にこっちへ!』
「お、おう!!でもどうするんだ?砂糖担いだまま走ってゴールまで逃げるのか?」
切島は言に指示された通りに囲われていた壁から砂糖を担いで脱出し、言と合流を果たす。そしてこれからの作戦を話し合い始めた。
『それだと絶対に追いつかれる。だから鋭児郎は砂糖くんを担いでゴールまで走って。セメントス先生は私が食い止めるから』
「なっ!?そんなこと出来ねぇよ!仲間を置いて行くなんて!!」
『じゃあこのまま3人でセメントス先生と戦闘を続けるの?砂糖くんはもう動けないし、鋭児郎だって個性がほぼ使えないでしょ。私も2人をサポートしながらセメントス先生と戦い続ける事はできない。この選択が今の最善なんだよ』
「でもっ…!!」
『もう、私は大丈夫だから!早くゴールまで行って、応援呼んできてよ”ヒーロー”!』
言は歯切れが悪い切島の背中を手のひらで強く叩き喝を入れる。
「〜っ…おう!!!」
言の喝入れに覚悟が決まったのか、目に色を取り戻してゴールにへと駆け出した切島。そんな切島の姿を見て言は安堵しながらセメントスの方に向き直る。
「なるほど、このような展開になりましたか」
『さぁ、口動かしていこ』