第18章 期末演習試験
体育祭後…いえ体育祭で言に負けたあとから酷く成長した劣等感の芽。雄英高校に推薦で入学したものの、同じ推薦入学者の轟さんと私では実力が雲泥の差であった。クラス委員では副委員長に抜擢されたがこれと言った役割はなく、委員長の飯田さんはマスコミ騒動の際やUSJ事件の時にしっかりと委員長としての役割を果たしその名に恥じぬ仕事をした。なら私は…?私は何もしていない…体育祭でも活躍の場はなく最終トーナメントでは言に惨敗。職場体験では言やクラスの皆さんが大きく成長をしていたと言うのに私はヒーロー活動ではなくCM等の広告事業の仕事ばかり。やっと活躍出来る機会が訪れても私が自分で誇れるのは勉学のみ。私は私が正しいことをしているのかが分からない。本当にこの判断で正しいの?最前の策が他にあったのではないか?劣等感はやがて判断力を鈍らせた。でも───轟さんの言葉で目が覚めた。認めてもらっていたのに、信じて下さっていたのに情けない。そして自分が自分を信じなくてどうするのだろうか。止めてしまった足と思考が動き出す。もう迷いはない、私はここから変わっていく!
「こんなすんなりいくか…」
「いえ…しかし…」
轟の言葉によって自信を取り戻した百。迷いのなくなった彼女の文句の付け所がない知識を詰め込んだ作戦は見事相澤を捕らえることに成功し、試験の条件達成となった。しかし百は気にかかる点があるようだ。
「カタパルトの発射で私…ミスを犯しました。先生は気付いた上で距離を取った…あの隙に防げたハズなのに…先生は故意に策にのったように見受けられました」
百は気がかりだったその行動の意図を相澤に問いかける。
「隣の轟を警戒しただけだ。おまえは見えたが轟は布を被っていたからな。凍らされると考えた。俺が最善手だと思い退いて、それがおまえの策略通りだったわけだ」
「ああ…本当時間さえありゃ…だ。ありがとうな」
相澤と轟の言葉に百は安堵と嬉しさを膨らませた。そして口元を抑えて今にも零れて出してしまいそうな雫を堪えた。
「…どうした?気持ち悪いか。吐き気には足の甲にあるツボが…」
「なっ、なんでもありませんわ!」
成長した百と轟の姿を見て相澤は捕縛具に身を包まれながらも、心做しか嬉しそうにして静かに目を閉じた。