第10章 双子対決
言の先程の発言を聞いた百は目から零れ落ちそうになった涙をぐっと堪えて保健室に入る。しかし養護教諭のリカバリーガールは丁度他の生徒の手当で留守にしているようだった。そんな百以外誰もいない保健室で彼女はふぅとため息を漏らし近くにあった椅子に腰を下ろす。
「完全に負けましたわね…」
誰もいない保健室で百はボソッと呟いた。誰がどう見ても分かるあの実力の差。言に完全敗北した百は悔しさと同時に言の成長も噛み締めていた。実力はあるのに百を勝たそうとずっと本気を出さなかった言。そして先程の試合で言はいつもより、個性を使ってはいたが近くで言を見てきた百には彼女の本気はあんなものではないということを知っている。
「これからの試合が楽しみですわ…」
そんな期待を膨らませながら自身の手を握る。しかしそんな言葉とは裏腹に彼女は少し虚ろな目をしていた。
(…あの子は”本当の事”を知った時、今まで通り私たちと家族でいてくれるだろうか)
まだ言に伝えきれていない事がある百は不安と申し訳なさで胸が張り裂けそうになる。しかし言にはまだ言えない事情があるのだもし”あの時”のような事をもう一度繰り返したらと思うと彼女も彼女の両親も面と向かって言に伝えることが出来ないのだ。
「でもこれだけは信じて欲しいのです…言…貴女は私にとってかけがえのないたった1人の義妹[いもうと]なのですから…」