第3章 1年A組
春、それは高校生活の始まりの季節。
先日までの長く陰鬱な冬が終わり時折肌寒さは感じるものの桜が咲き誇っていた。
そして私、八百万 言。
晴れて今日から雄英高校ヒーロー科 新1年生です。
『百ちゃーん!そろそろ行くよー!』
私は自宅の玄関で未だに身支度をしている姉、八百万百の名前を大きな声で呼ぶ。
「ま、待ってください!」
『まだ準備してるのー?』
「だ、だって今日は入学の日ですのよ!何か変なところがあっては…」
言はため息を吐きながら百の声が聞こえてきた部屋に足を向けると、百はまだ鏡の前でヘアセットをしていた。髪型は綺麗な黒髪を高く括り少しボリュームのあるポニーテール。百はいそいそとその高さを調節したり前髪の分け目を何度も直したりなどヘアセットが終わるには小一時間はかかりそうな様子だった。
『大丈夫、今日も百ちゃんは可愛いよ』
「で、でもここの髪とか変では…」
言はドレッサーの前に座る百の後ろに立ち肩に手を乗せて身だしなみに問題がない事を伝えるしかし当の本人はあまり納得していない様子。
第一、世間から見ても百は容姿端麗。そこまで身だしなみを気にする必要はないと思うが年頃の女の子だし仕方がないのかなと言は悶々と頭の中でそう考えた。
『もーー!だいじょーぶ!!ほら!クラス1番乗りするんでしょ!行くよ!』
しかし、時計に目を向けるとクラスに1番乗りするには危うい時間だったのでドレッサーの前から頑として動かない百を半場無理やり引っ張り言と百は家を出た。