第10章 双子対決
誰もいない生徒控え室で私はパイプ椅子に腰掛けながら神妙な面持ちで自身の出番を待っていた。
(あぁ…うるさい…)
そして賑わうスタジアムの歓声やマイク先生の実況が壁越しに聞こえてくる。普通ならば気に触る事のない音が今の私には鬱陶しい音に聞こえてしまう。先程までのレクリエーション時やその後の試合中は人が来ない場所で今回の試合を”どうするか”とずっと考えていた。
そしてその帰り、控え室に向かう私は偶然にもお茶子ちゃんと蛙吹さんに遭遇。緑谷くんと普通科の人が良い試合をしていたとか瀬呂さん対轟くんは彼の圧勝だったとか私が知らない間に色々あったみたいだけど今の私からしたらどれもどうだっていい。まさか初戦で百ちゃんと当たるなんて考えもしなかった…。
『…っ初戦でさえあたらなければどうにだって出来たのに。2回戦目であたる組み合わせなら初戦でどうにかすることが出来たのに!』
私は顔を歪ませながら机の上に乗せている両手をこれでもかと言うぐらいに力いっぱい握りしめる。
『なんで…!なんでっ!!なんで初戦なのっ…』
私はこのやり場の無い感情を抑えることが出来ずその握りしめた手で机を大きく叩き、パイプ椅子がガチャンと音を立てて倒れる程勢いよくその場に立ち上がる。そして前髪をかきあげるようにくしゃりと片方の手で顔を覆い、今にも消え入りそうな声で呟く。
『初戦で百ちゃんと当たってしまったら”わざと負けれない”じゃんか…』