第22章 22
そう言って、黒霧は階段を降りて行った。
独特な香りのする部屋に脚を踏み入れ、倒れている女へと近づく。服が動いた気がし、顔を見れば泣いたであろう痕がついた女は微かな寝息を立てていた。
「(この女、寝てんのか?)」
女の脚を見て、寝ているのでは無いと分かった。意図的に荼毘に焼かれている。動けないように脚を焼かれたのだろう事は容易に想像が出来た…。顔を見る限り見た目は悪くはない…。
が、リスクを犯してココまで連れてきて、逃げ出さないように足まで焼き…挙句、鍵まで閉めていた。こんなどこにでも居そうな女にか?強く掴んだら折れそうだな…そう思い、覗き込み髪の毛に触れる。
目がパチリと開くとニッコリと笑いかけられる。折れそうな両腕が、伸びてくる…首に回され引っ張られバランスを崩して女を押し倒す形を取ってしまう。
「…お前、正気か?」
「先生…助けに来てくれたんですね…嬉しい」
そう言って、女は唇を重ねてきた。
独特なねっとりとしたキスに思わず目を細めてしまう。押し返すように体を剥がすと女は悲しそうな顔をした。
コイツ、痛みで完全におかしくなっている…。
目が虚でオレを先生と呼ばれる誰かかと間違えていてそれさえも認識出来ていない。