第10章 10
「これで、誰も来ないだろう…」
「相澤先生…」
「どうしたそんな顔して」
相澤先生は私の震える手を強く握りしめてくれる
「出久くんとしました…けと、個性が発動しなくて…」
「個性が使えなかったのか?」
「は、はい…」
「いつもと違う点は?」
「無いです…その、な、中に出してもらって…いつも通り最低限の材料と手をかざしても反応がなくて…」
状況を説明するのに行為の単語を発することが恥ずかしくて顔を赤らめ言葉を詰まらせてしまった。相澤先生は真面目に話を聞いてくれているのに…
「昨日の事で心身にダメージがあったのかもしれないな…リカバリーガールの所に行ってみるとしよう…オレは校長と凛の両親に話を聞いてみる」
そう言って私を引き寄せて相澤先生は強く抱きしめてくれた。
守れなくてすまないと声をかけられて…みんな、私を守れなかった事を謝ってくれた。
私はその謝る姿を見る度にこの人達は心からヒーローだと思った。
相澤先生とリカバリーガールの元に向かい事情を話すとリカバリーガールは私の体を一通り調べてくれた。
けれど、悪いところは1箇所もなくむしろ、昨日怪我したところ以外は健康そのものだった。
イチゴ味のペッツを貰って口に含み話をする。精神的なモノと言われて私はあまり納得出来ないまま、相澤先生と校長室へと向かった。
「相澤先生…私、自分で母親に聞いてみようと思います」
「…昨日の事はもうオレから伝えてあるから、そうしてみろ…そしたら、オレは校長の所に行ってくる」
「はい…お願いします」
「帰りはオレが送る。研究室で待ってろ…」
そう言って私は相澤先生と別れ研究室へと戻りスマホを手に取り母親へと電話をした。