第10章 10
「も、もしもし?」
『凛…あなた、大丈夫なの?』
「うん…昨日の事はなんとも思ってないよ」
『そう…強くなったね。それ以上は言わないわ』
「ありがとう。…それでね、お母さん…私、個性が発動しなくて、その、そういう事ってあるのかな?」
『今まで聞いたことないわ…けれど、ストレスや個性を消されたり、後は無個性の人とか…』
「無個性はないと思う…個性使ってる人だし…」
『そう…なら、ちょっと聞いたことないわ…親戚にも聞いてみるわ』
「…ありがとう。また連絡するね?」
『また、こっちにも帰ってきなさい』
「うん、ありがとう…」
あまり収穫のないまま会話が終わり電話を切ってしまった。相澤先生を待つ間1人だけの空間だった。
ふとゴミ箱に目をやれば先程捨てた紙パックが入っていてなんであそこにあったのか今更になって不思議に思った。私は今日はまだ1本も手をつけていない、だとしたら朝無理やり押し付けた爆豪くんへの1本だとしたら…あの、扉の向こうに彼が来ていたことになる。
私と緑谷くんの事は見ていないにしても…鍵がかかっていたという事は気がついたはず。
そう思っていると、扉の開く音がして相澤先生が入ってきた。
「校長先生に話してきた」
「私も、母親に聞いてみました…」
「凛の方は何か有力な情報は?」
「いえ…特に」
「オレの方もだ…けど、お前を学校行事に連れていくことになった。両親にも許可は得た」
「え?」
「林間合宿に行くぞ…凛」
意味がわからずに私は目を見開いてしまった。