第44章 ホークス オリジン
オレが助ける
そう誓ったはずなのに、反対に君に助けられている。
無駄に広い風呂場でしゃがみ込んで凛ちゃんを抱きしめて、いつもと違うボディソープの香りに違和感はあって
それでも抱きしめ返してくれるその腕が嬉しかった。
それなのに、邪魔する楽しそうな声。
その声に反応する様に、オレを引き剥がす凛ちゃん。
「荼毘…」
その行動を、目で追えば荼毘に擦り寄るような声を出す。簡単に引き剥がされたオレは、振り返るだろうと鷹を括って
「凛…ちゃん…」
名前を呼ぶなのに、凛ちゃんは振り向かず荼毘に手を伸ばしていて、勝ち誇った様に笑う荼毘に抱きしめられて連れていかれる。
バタリと閉まる扉に、不安を覚えた。
自分で吐き出した欲望と流れる水が渦を作って。
幾重にも重なり混ざり、吸い込まれる
「あと…少しの我慢だから…」
自分に言い聞かせたのか、凛ちゃんへ言ったのか分からない言葉をポツリと吐いて
立ち上がり、インナーとズボンだけ身に纏う。
どうせまた、荼毘は凛ちゃんを犯しているんだろうそう思って扉を開けて目を疑った。
「荼毘っ!」
冷静で居ろと心では分かっているのに声を荒げていた。
独特な焼ける匂いと色の変わった腕。それなのに、凛ちゃんに手をつかせてオレに見せつける様に荼毘は行為を続けている。
「あれだけ、怪我をさせるなって言っただろッ…この子、連れ出してるのが分からないのか!?」
「勘違いしてるぜ?ホークス、凛からお願いして来たんだよ」
「そんな訳あるかッ!震えて泣いてるだろうが」
そう言うと、嬉しそうに笑って凛ちゃんの髪の毛を持ちオレの方に顔を向かせる。荼毘が耳元に顔を近づけると凛ちゃんは涙を浮かべた目で笑顔を見せて…苦しそうに声を出す
「…ちがうのっ…私が、お願いしたの…跡を残して欲しかった…の」
その言葉にオレは何も返せなかった。
何を言っても正解の答えを導かなさそうだった…沈黙。
長い間裏の世界にいた癖なのだろう一番ずるい選択をしてしまう。