第32章 32
「凛、家に来ないか?」
「…焦凍のお家!?」
思いがけない返事に返事をする声が大きくなってしまい恥ずかしくなった。
焦凍の家は確かに気になった、けれど、もしかしたらエンデバーが居るかもしれないと思うと救出された件をどう対応していいのか分からなくなりそうで怖かった。
「わ、私、焦凍のお家行ってみたいって心から思うんだけど…今日、知り合いが家に様子を見に来る用事があって、それで、その…えっと」
嘘を付くのが本当に下手くそだと思った。
知り合いってなんなんだろう…その前に焦凍には家が汚くてって言っておきながら既に矛盾してるし。
「なら、今日は家じゃなくて外で食べるか…」
バレる事なく、話が進んで少し驚いた。焦凍はきっと天然だと思った。
そんな焦凍が可愛くて彼が1人では絶対に食べないものを一緒に食べたいと思ってしまった。
「焦凍、私がお昼決めてもいい?」
「別に、構わねぇ」
「ありがとう…量足りなかったらごめんね」
先にそう伝えると昼間はそんなに食べないと言われて驚いた。
焦凍の隣を歩いて居るとチラチラ視線を感じる中にはショートとしての彼を知っている人も居るのかもしれない、彼の人気に支障がでるかもとふと思い少し離れるたびに焦凍は歩幅を合わせてくれて結果としてただゆっくり歩かせてしまうだけになってしまった。
お店に着くといつも行列が出来るほどのお店がなぜか人が少なく店内へとすぐ入れてしまう。
店内は20人程度しか座ることが出来ない小規模なお店でカウンター、テーブルで選べた。
テーブル席が空いていて通されると、カップルと女性客しか居らず焦凍はなんの店なのか分からないまま席についていた。カウンターにはサインが沢山飾ってあり中には、マウントレディやミッドナイトのサインがあり焦凍に言うと
「この雰囲気だと、親父のは流石に無いな」と冗談を言うので笑ってしまった。