第30章 30
「帰り遅いね?」
「…」
「無視しないでよー」
そう言ってくるホークスにいまだに声がでず見つめるだけだ、なぜホークス?ホークスのコスプレ?偽物?ドッキリ?懸賞?そんなバカみたいな考えがぐるぐると駆け巡る。目の前にひっそりとファンだったヒーローがいる事実に混乱をした。
けれどホークスからの一言で目の前のヒーローを睨みつける形になってしまった。
「今、なんて言いました」
「あれ?聞こえなかった?“大人によって存在を消された子猫ちゃん”って言ったんだけど」
「…なんで知ってるんですか」
「あれ?怒ってます?やだなー冗談なのに」
そう言って口元だけで笑う姿が妙に気に障った。ファンだったヒーローに会えて嬉しい、そんなミーハーな気持ちはどこかに行ってしまった。
「帰ってください」
「用事があるから来たんだけど」
「私は無いです」
そう言って窓から部屋へ戻ろうとすると窓を手で止めて閉められないようにされてしまう。
ヒーローに一般人が勝てないなんて事は分かっている、先日の一件から自分が非力すぎてため息しか出なかった。
「入れて?」
「嫌です。出て行ってください」
「じゃ、勝手に入る」
「ちょっと!!ホークス!!」
ズカズカと歩く足が止まりくるりと私の方を向いて先程とは違い屈託のない笑顔で