第1章 前編
トランクスはそんな幼馴染をゆっくり振り向くと、初めて笑顔を見せた。
「悟天、いつもありがとうな。……もう行っていいぞ」
でもそれは明らかに作った笑顔で。
「トランクス君!」
「……悟天、いつも報告を頼んでいるのに悪いんだけど、オレ達の問題だから」
目を伏せて言うと、悟天はムーと顔を赤くさせ、
「トランクス君のバカ!」
まるで子供のように怒鳴った。
そのまま入ってきた窓の方にドスドス足音を立てて戻っていく。そして。
「意気地なし!」
そう言い残すと、その場で気を暴発させ飛び去って行った。
暴発で起こった風のせいで机の上に乗っていた書類が部屋中に舞う。
それを人事のように眺めながらトランクスは短く息を吐いた。
再び力なく椅子に座り込み、そのまま背もたれに仰向けになる。
「……オレに、これ以上どうしろって言うんだ」
――ずっとこのまま会わないつもりなの?
悟天の言葉がよみがえる。
が記憶を無くしてしまった訳を悟天は知らない。
本当は、何も知らない悟天をに会わせたことは反則だったのかもしれないけれど……。
オレはを守ってやれなかった。
でもせめて、元気にしているかどうか……それだけでも知りたかった。
オレにはもう、に会う資格が無いのだから……。