第1章 前編
初夏の良く晴れた日。
「おーい! ~!!」
気持ちの良い風の中、洗濯物を干していると空から声が降ってきた。
顔を上げると白い雲の間から大きく手を振ってこちらに飛んでくる青年が見えた。
「悟天!」
が笑顔で応えると同時、悟天はの前にタっと降り立った。
そう、彼は飛行機ではなく自力で飛んできたのだ。
「元気してた!?」
「元気よ! って、ついこの間会ったばかりじゃない」
悟天はここから少し先にあるパオズ山に住んでいる。
がここに越してきてから、一番に出来た友達だ。
いつも明るくて元気で、話しているとこちらまで自然に元気が出てくる。
はこの悟天が好きだ。……といっても、あくまでも友達として。
恋愛としての好きな人は今のところいない。
こんな田舎では同年代との出会いがほとんどないのもあるが。
……何より、今は恋愛に興味がなかった。
「やっぱりいいなぁ、私も自分で空飛べたらなぁ~」
は羨ましそうに言う。
初めて出会ったときもこうやって空を飛んできた悟天。
その姿があまりにも自然で、不思議とそこまで驚きはなかったけれど。
……やっぱり羨ましい。
「うーん、には無理だと思うよ。武術の心得とかあれば別だけど」
「そっかぁ……。あ、ねぇ悟天、今時間ってある?」
「え?」
「これからウチでお茶していかない? お母さんも悟天がくれば喜ぶし」
は笑顔で言う。