第1章 前編
「や、やだ!!」
は叫ぶ。
「ヤだよ! 悟天戻って! 行きたくない!!」
怖い……怖い!
あの街へは、もう行きたくない……!!
悟天の服を掴みながら必死に懇願するが、彼は苦しそうに表情を歪めただけだった。
「ごめん……」
その短い一言に、彼が本気なのだとわかった。
は口を閉じ、青い顔で向かう先を見つめることしか出来なかった。
ドクンドクンと低く鳴る心臓。頭にまでその音が響く。
と、その時だった。
「!」
悟天が前方を見つめながら急にスピードを緩め、そのまま下降していった。
まだ西の都まで距離があるはずだ。
諦めてくれたのだろうか……?
何も無い小高い丘に静かに降ろされる。
足が地面に着いて少しホっとする。
「思ったより早かったな……」
悟天が空を見上げながら呟く。
「え?」
も同じように空を見上げる。
と、何かが高速でこちらに飛んでくるのが見えた。
グングンと近づいてくるそれは金色に輝いていた。
それがすぐに人間だとわかったのは、悟天が空を飛ぶ姿を見ているからだろうか。
なぜか、ひどく胸がざわついた。