第1章 出会いと別れ
「あ、天にぃ!…と、ちゃん!!」
私たちが病室に入ると、たちまち瞳をキラキラさせて人懐っこい笑顔を浮かべる陸くん。
つられて私も笑顔になる。
「あ、僕はお花の水替えてくるから」
「ありがとう、天にぃ」
ふわりと笑って陸くんに応えると病室から出ていった。
「陸くん、具合はどう?」
「最近すごく調子がいいんだ!だから来週から家に帰ってもいいって!」
「え!本当!?やったあ!!」
病室だということも忘れて2人で大はしゃぎしてしまった。
「…俺ね、」
「うん?」
突然声色が落ち着き、黙って聞くことにした。
「いっつも天にぃにわがままばっかり聞いてもらっちゃって、でも天にぃは嫌な顔ひとつせず俺に尽くしてくれてたんだ。…だから、俺、天にぃはもっと自由になってほしいって思ってたんだ。」
ぽつり、ぽつりと天くんへの胸の内を話し出す陸くんに、私は静かに頷く。
「俺のせいで天にぃは他の友達と遊べてないんじゃないかっていつも思ってて…。でも、」
私の瞳を真っ直ぐ見つめて陸くんは心の底から嬉しそうに言った。
「ちゃんが天にぃと出会ってくれたから、そうやって心配するの、減ったんだ!」
「陸くん…」
「今の天にぃね、前よりすこ〜しだけど、楽しそう!」
「そ、そうなの?」
そう言われてしまうと、少し照れるし、嬉しくもなる。
「そうだ、天にぃのこともっといっぱい知ってほしいから話すよ!」
それから陸くんは天くんのことについて嬉嬉として話していた。
「天にぃは歌も踊りも上手なんだよ!」とか、
「好きな食べ物はお母さんの作ったオムライス!」とか、
「天にぃすっごくかっこよくて、バレンタインの時なんか手に抱えきれないほど貰ってた!」とか…たくさんたくさん話してくれた。
「俺ね、病気が治ったら、天にぃと一緒に歌いたいんだ!一緒のステージで!!」
その瞬間、2人が大きなステージの上できらびやかな衣装を着て歌って踊っている姿が想像できた。
「…私も、見てみたいな。」
ぽつり、つぶやくと
「…陸、ずっと僕の話してたから入りづらかったよ」
天くんが、赤く綺麗な花を花瓶に入れ、入ってきた。