第1章 出会いと別れ
「ただいま!行ってきます!!」
「ちょ、どこ行くの!?」
「友達の家ー!」
というのは嘘で陸くんのお見舞いに行くのだが。
…いや、それも口実なのかもしれない。
本当は…
「天くん!!」
「あ、」
ドアを開けると柔らかな微笑みで待ってくれていた天くん。
その落ち着いた雰囲気はとても同年代とは思えなかった。
「天くんって、雰囲気大人っぽいよね」
「周りの男子たちに比べればそうかもね。…いきなりどうしたの?」
「…そういう人って、モテそうだから。」
「………」
……私、何言ってんだ??
「な、なしなし!!!今の!!」
「……なんで?」
「え?」
「まぁモテるけど」
やっぱり!!
「でも、大勢の人に好かれるより、好きな子に好かれた方が僕はいい。」
ふ、と私の瞳をまっすぐに見つめながら微笑む。
瞬間、梅雨明け独特の空気が私たちの間を抜け、やがて爽やかな風になっていく。
ーあぁ、夏がくる